【早稲田祭】失ったものへの、終わりなき祈り/プロジェクションマッピング『pule/』

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インタビューコラム学生

今年は「二者性」にこだわり

編集部:昨年と今年の大きな違いはなんですか?

ナカジマ:昨年は、プロジェクションマッピング『転射』というタイトルでした。先述した「投企」を出発し、プロジェクターがつくる光と影に注目したわけです。光をつくるということは、影をつくること。

編集部:また深い(笑)

ナカジマ:壁に光を当てたら、光が当たらない部分が生まれる。背中合わせの光と影で、「本来の自己」と「表象される自己」を現すのが去年のストーリーだったんです。ここでは、自分と自分の対話がベースになってくる。あくまでわたしの解釈ですけど。

今年は「二者性」というものを強く意識しています。平たくいえば、「あなたとわたし」の関係ですね。二人の関係っていうのは、いつ何時でも特別なんですよ。もちろん、恋愛なんかに限らず。

演劇にも強い個性が

編集部:今年はこのテーマからも、演劇と組み合わせることを決めたと。

ナカジマ:プロジェクションマッピングって、去年もやってるんですよ。「巨人の肩の上に立つ」以上、今年はより大きな跳躍が必要で。1日目の夜、千数百人を前に伝えること、あるいは伝えないこと。よくよく考えたら、演劇しかありませんでした。

編集部:なるほど。演劇ではどのようなものを?

ナカジマ:二者性をあらわすとき、ほとんどの演劇ではあなたとわたしの物語のなかに、あなたとわたし以外の人間が出てくる。他者とのコントラストで「あなたとわたし」の特別さを示すんです。
そこで今回はあえてふたりきりで、二者性というものを描き切ろうという試みです。

編集部:それが「結局ここにははじめから、あなたとわたししかいないから。」というフレーズにつながると。

ナカジマ:まさしくその通りです。

編集部:この演劇の演者は2人なんですね。

ナカジマ:そこはこだわっています。キャストはわたしともうひとり。

編集部:ご出演なさるんですか!?

ナカジマ:はい(笑) 3号館ステージでお会いしましょう。

教室はプロジェクションマッピング×短歌

編集部:今回は2日間、教室での展示も行われるということで。

ナカジマ:そうですね。教室企画では短歌をもとにしています。短歌って定型は57577という31音なんですね。表現の形式として、わたしには俳句でも自由詩でもない、この詩形がちょうどよくて。
『PAUSE』という未発表の15首連作をベースにします。

編集部:やっぱり教室展示を見てから屋外の作品を見た方がより楽しめますか?

ナカジマ:それはもちろん(笑) 一応別の作品としてあるんですが、内容の繋がりは大きいので、ぜひ併せて見ていただきたいですね。

編集部:大事なメッセージですね(笑)

ナカジマ:それこそ屋外のプロジェクションマッピングは1日目の夜、1回きりの公演なので、来れない方もいらっしゃると思うんですけど。屋内の方は2日とも朝から晩までやっていますのでね!

『失ったもの』って?

編集部:結局のところ、ナカジマさんが失ったものとは?

ナカジマ:うーん、それは秘密でお願いします。

編集部:来てのお楽しみ、ということですか?

ナカジマ:みなさんに差し迫るような作品でありたいとは願っているので、わかんなくていいんです。ひらかれすぎない方がちょうどいい。呪いになるので。

編集部:呪い?

ナカジマ:フィクションですから。楽しんでもらえたらうれしいです。

あなたが『見たもの』、それがすべて

編集部:制作の過程で苦労したところを教えてください!

ナカジマ:あーそれはもう(笑) でも、あまり言いたくないんですよね。変な背景文脈なんていらない。

編集部:企画を見て感じ取ってもらう、と。

ナカジマ:結局お客さんに出すものが全てなので。だからこそ、そこはわたしたちだけのものであるべきだし、お見せするもの以上でも以下でもない。言い訳はないので、そこで受け取るなり、投げ棄てるなりしてもらえたらなと。

▲プロジェクションマッピングは「早稲田祭2023運営スタッフ」による企画。
ナカジマさんも運営スタッフに所属している


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