オリンピック難民選手団の事前トレーニングキャンプ受け入れについて

コラム
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こんにちは、Sodai編集部です。

皆さんは、東京オリンピックに出場する難民選手団の事前トレーニングキャンプを早稲田大学が受け入れたことをご存知でしょうか?

既に知っているという方も多いと思いますが、知らない方のために早稲田大学が発表した受け入れに関する情報を紹介します。

大学の発表にもあるように、難民選手団の事前キャンプ受け入れは大会史上初の試みであり、それに早稲田大学が関われたことは大変光栄なことです

しかし、昨今の新型コロナウイルスの感染状況やこれまでの新型コロナウイルスへの早稲田大学の対応を考えると、今回の選手団受け入れには多々不安な点が見受けられます。

そこで、今回の記事ではこの早稲田大学の発表に対して感じた意見を述べさせていただこうと思います。

昨今の感染状況を踏まえて

まず、現在の新型コロナウイルスの感染状況下で難民選手団を受け入れることは安全であると言い切れるのでしょうか?

現在、緊急事態宣言は解除され感染者数はピーク時と比べると落ち着いたものの、未だ予断を許さない状況にあります
ワクチン接種も高齢者や職域接種を中心に進んできていますが、全人口の接種率は依然として低水準です

先日、早稲田大学でもワクチン接種を実施するとの発表がありましたが、1回目の接種開始日が7月5日であることを考えると、選手団が到着する7月14日までに大多数の早稲田生や大学関係者が接種を完了するというのは難しいと考えられます。

このような感染状況下でキャンプの受け入れを行えば、生徒と選手両方の安全を確実には保障できないでしょう

今までの対策との矛盾点

早稲田大学の今回の対応は従来までの感染症対策と矛盾する点があります

早稲田大学は新型コロナウイルスの感染リスクを理由にこれまで多くの課外活動を制限してきました
サークルの練習自体は緊急事態宣言の解除に伴い再開を許可されましたが、対面形式の学外大会等への参加の原則禁止、イベントの事前申請制、合宿や宿泊を伴う遠征の原則禁止など課外活動の制限はまだまだ多いです

29名もの選手が宿泊を伴う今回のキャンプを受け入れるという決定は、こうした制限や従来までの感染対策と相入れるものなのでしょうか。

少なすぎる情報

加えて、今回の難民選手団の事前キャンプ受け入れに関して早稲田大学が公開する情報が極めて少ないことを指摘します

早稲田大学ホームページでは選手の情報や受け入れ期間、実施場所についての発表しかなく、滞在中の選手達の学内外での行動制限大学へ通う生徒に対する行動指針など、キャンプ期間中に選手団と生徒の接触を避けるための措置に関しては明言されていません
キャンプ中に選手達は学内の施設を使用することになると思いますが、学生達には何らかの利用制限が出されるのでしょうか?

このように現時点では、難民選手団の受け入れだけが発表されている状況で、早稲田大学は肝心なコロナウイルス感染対策に関して何の説明もしていません
選手と生徒の命を守るために、大学側が厳しい感染対策を取りそれをアナウンスすることは必要不可欠でしょう

終わりに

最後に、当記事はオリンピック競技大会における難民選手団について、否定的な見解を述べるという趣旨のものではないということを付け加えさせていただきます。我々は「スポーツを通じたより良い世界の形成」というIOCの理念に賛同し
東京オリンピックでの難民選手団の活躍を応援しています。

しかし、先にも述べたように今回の事前キャンプ受け入れに関して安全性の面での不安は拭いきれません
そして、感染症へのリスクから大学生活を制限されている学生にその安全性に関する説明をしないという大学側の態度はのはいかがなものでしょうか

ともあれ、いったん事前トレーニングキャンプを受け入れたからには、期間中の安全確保のために全力を尽くすかないでしょう

早稲田大学の今後の対応に期待したいです。

【参考】

早稲田大学 オリンピック・パラリンピック事業推進室
「東京2020オリンピック競技大会で 難民選手団の事前トレーニングキャンプ受け入れを決定」
https://www.waseda.jp/inst/tokyo/news/2021/06/10/9011/