早稲田大学トリビアの泉

コラム
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早大生や早稲田を目指す受験生の皆さんは、自分の在籍校(志望校)の歴史や文化にどれほど通じていますか?

1882年に開校された日本一深い歴史を持つ大学である早稲田ですが、それ相当量の興味深い雑学が存在することに、実は多くの人が気が付いていないようです。

今回は、大きく二つのテーマから早稲田大学にまつわる「トリビア」をご紹介していきます。早稲田の知られざる歴史に触れ、これまで以上に愛校心を育んでゆきましょう(?)

目次

第一章:ワセダ文化の疑惑

早大生の皆さんは、自分の大学がどのようにして作られたのかご存じでしょうか?

創立者を敬愛してやまない三田の某大学とは異なり、「本キャンの銅像の人が作った」くらいにしか捉えていない人もいるのではないでしょうか。

しかし、弊学の未来を担う早大生(を目指す皆様も含む)には、その歴史を知り母校愛を育んで頂かなくてはなりません。

早稲田大学は、近代から現代へと移行する激動の明治期に大隈重信をはじめとする教育者たちによって、西欧列強に追いつかんと外国からさまざまな技術・制度を取り入れた明治政府のように、多大なる試行錯誤を積み重ねて発展してきたのです。

このパートでは、早稲田大学がリスペクト&オマージュし、自らオリジナリティを付加して早稲田文化へと取り入れたと思われる事柄をご紹介していきます。

・疑惑その1「大隈講堂」

早稲田のシンボル

記念すべき第1号は、あの大隈講堂です。

「早稲田大学の象徴でもある大隈講堂が、まさかパクリだなんてありえない!」とお思いの方もいるでしょう。

しかし、異国の地スウェーデン・ストックホルムに、それを示す動かぬ証拠が存在することがわかってしまいました…↓

Hantverkargatan 1, 111 52 Stockholm

お分かりいただけただろうか?

カラーリングや細部の装飾こそ異なれど、特定のアングルから見つめるとあまりにも既視感を感じる造形となっているではありませんか!

それもそのはず、この大隈講堂は1920年代当時、早稲田大学出身の建築家がこちらの建物に影響を受けて作られたとされています。

こちらの建物は上空から見るとL字型となっており、大隈講堂とはその点において異なりますが、これはもはや言い逃れ不可能なレベルでしょう。

・疑惑その2「早稲田大学校歌」

みなさんご存知日本でトップクラスに有名な校歌であり、早大生の皆さんであれば入学式で(心の中で)熱唱し、未来の早稲田生を目指す方々であれば毎日のように歌うことで夢の大学生活に思いを馳せているであろう早稲田大学の校歌ですが、なんとこちらにオリジナルと思しき楽曲があることをご存じでしょうか。

それは紛れもない世界最高峰の大学群アイビー・リーグの一角をなすイェール大学の学生歌、’Old Yale’です(校歌ではなく、現在では歌われていないらしい)。

お聴きいただけただろうか(某有名動画サイトなどで検索すればすぐに音源が入手できるでしょう)。

あの象徴的なイントロ、「都の西北」から始まる歌い出し、ラストスパートの「わせだ」のフレーズを7回も連呼するあのパートまで全てが思い起こされ、あらゆるメロディに既”聴”感を感じるではありませんか!

それもそのはず、弊学校歌は明治40年に創立25年を迎えた当時、作曲家の東儀鉄笛が’Old Yale’をベースに作曲したことがわかっており、それは大学当局も認めているのです(https://www.waseda.jp/library/news/2019/03/20/6309/)。

とはいえ「早稲田大学校歌」は、長い間関係者に愛され続けている一曲であって、早稲田生の心を一つにするために大学の理念が込められたその歌詞は、早稲田へ入学する者、早稲田から巣立つ者の胸を年々歳々打ち続けています。

ちなみに言い訳としてこの’Old Yale’にもまた原曲が存在するとのことですし、ここはおあいことさせてはいただけないでしょうか…?

・疑惑その3「3号館」

早稲田キャンパス3号館

政治経済学部棟として2014に竣工し、そのあまりの綺麗さと手の込みようから「高級ホテル」や「学費の結晶」、挙句の果てには「(16号館と比較して)学部格差の象徴」などと揶揄されるこちらの構造物ですが、本誌の独自調査により元ネタが存在する可能性が浮かび上がってきてしまいました…!

日本工業倶楽部会館

こちらは「日本工業倶楽部」と呼ばれる公益法人の会館で、工業界の有力な企業家たちの交流の場として機能しています。元々は1920年に完成した建物です(これも絶妙に旧3号館に似てる)。

問題は2003年に建て替えが行われているのですが、本学3号館の竣工に明確に時間的に先行しているという点です。

3号館は、この新旧を両立させるという魅力的な建築様式に大いにパクりインスパイアされた可能性が…?

しかし、こちらの日本工業倶楽部もまた「旧館の一部を再現する」というコンセプトのもとで建て替えられた経緯があるため、偶然の一致の可能性も否めないかもしれない…


第二章:志半ばで…実現しなかった幻の学部たち

“農”と”海” https://www.s-hoshino.com/f_photo/

早大生や受験生の皆さんは、早稲田大学に現在いくつの学部があるかご存知でしょうか? いまいちど数えてみましょう。

早稲田には人文系や社会科学系、3学部からなる理工学系のみならず、国際教養学部やスポーツ科学部、人間科学部といった、幅広い分野を学ぶことのできる学部もあります。

専門的な学部だけでなく多彩な学問を横断的に学べる教養系の学部も存在しているため、多様性が重んじられているのですね(ですから、拗らせてしまった早大生のように一部の学部を所沢体育大学やら戸山女子大学などと揶揄しないようにしましょう)。

正解は13学部でした。これは東海大、法政大、日本大に次いで国内4位の数字です。

そんな多彩な学問と触れ合える早稲田大学ですが、実はその長い歴史の中では、早大関係者が長年コンプレックスを抱えている医学部を含めて、さらに多種多様な学部の構想が練られていた過去があるのです。

そのうち最も大きな計画は、1980年代に100周年記念事業として発案された、以下の学部たちです。

・農学部・海洋学部と新キャンパス候補地問題

記念事業を実行に移すにあたり、当時の早大総長は千葉県幕張の埋立地に海洋学部を設置し、すでに用意していた現在では附属校の一つである本庄高等学院の敷地となっている本庄キャンパスに農学部を設置するという計画を立てていたようです。

しかし、この計画は総長の代替わりと同時並行で進んだがゆえ、新総長のもとで計画は大きく変更されてしまいます。

突如として埼玉県所沢が新キャンパス候補地として浮上し、そのまま理事会と評議会によって確定されてしまったのです。

この背景にはいろいろな事情があったようですが、果てには当時所沢の土地を所有していた企業との関係まで、さまざまな憶測が飛び交ったようです。

結局のところ真実は闇に葬られ、戦後早稲田大学史のタブーの一つとなってしまうこととなります。

そして、所沢キャンパスには農学部・海洋学部の代わりに人間科学部が設置され、現在に至ります。

・医学部

最後は、慶應を追い抜くための最後のピースであり、かの大隈重信の悲願でもあった医学部設立をめぐるお話です。

田中愛治現総長(愛称:らぶじ)は、2018年の総長選の際に医学部設置を公約として勝利を収めました。

ですが、それ以前にも早稲田は幾度も医学部の創設を目指しては頓挫しているという苦い記憶の数々があるのです。確認できただけでも、

  •  創立25周年計画
  •  1950年の日本医科大学合併問題
  •  1956年の国立病院払い下げ問題
  •  創立100周年計画
  •  2000年代の東京女子医科大学合併問題

5度にもわたって大きく医学部設置が議論されてきたようです。

にも関わらず財政難、政府からの反発、他大との競合など、さまざまな障壁によってその夢は潰えてしまいました。残念。

ですが、大学自体の努力に留まらず、2016年には早稲田卒の医師で構成される「稲門医師会」が発足するなど、早稲田を医学界へと導く道程は徐々に形作られているようです。今後の医学部事情からは目が離せませんね。

<参考>山本一生(2019) 存在しない大学史:早稲田大学における幻の学部構想. 上田女子短期大学紀要, 42. pp.77-85.


 <余談>

海洋学部、農学部、医学部いずれとも企画倒れとなってしまいました。では、現在の早稲田大学ではこれらの分野について学ぶことができないのでしょうか?

筆者による独自調査では、その答えは「必ずしもNOではない」です。学部が設置されていない以上、専門的に研究を行うことが難しいという点ではあるかもしれませんが、早稲田にはこれらの分野に通ずるカリキュラムがいくつか存在します。

医学に関しては、先進理工学研究科に共同先端生命医科学専攻という早稲田との合併も噂されている東京女子医科大学との共同大学院が存在します。

両大学はTWInsという共同医学研究施設を運営しており、実は非常に深い関係にあります。

このほかにも先進理工学部には生命医科学科があったり、全学部生が取れるグローバルエデュケーションセンターという科目区分には「医学入門」というこれもまた東京女子医科大学による提供講座があったりと、意外にも早稲田に医学教育の存在が確認できます。

また、農業に関しても「共同先進健康科学専攻」という、東京農工大学と共同の大学院が存在します。

“理学・工学・農学を基軸とし、さらに獣医学、薬学、食科学、医科学等の幅広い分野を組み入れた領域融合型で先端的な大学院教育研究”

http://web.tuat.ac.jp/~tw-kyodo/about/index.html

を目指しているとのことです。


それぞれの学部・研究科をミクロレベルで見ると、意外にもさまざまな学域に通じているというのが早稲田の特徴と言えるのかもしれません。

一見農学とは関係のない政治経済学部においては農業経済学を専門としている先生がいたり、一般的な農学部において学ぶ生物学は先進理工学部の応用生物科学科や、教育学部の生物学専修などで扱われています。後者では、海洋生物学を学ぶこともできます。

早稲田大学を受験する方や、他の大学も視野に入れている高校生・受験生の方も、自分が学びたい分野が志望校にあるかどうかを探す際には、「関心のある分野に対応した学部があるかどうか」という学部での専攻という形だけではなく、学科カリキュラムといったより細かい単位で掘り下げてみてはいかがでしょうか。

リサーチを重ねるにつれて、自分の知らなかった分野に出会えたり、自分のやりたいこともより明瞭に見えてくるかもしれません。


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